第3章

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「あれ?吉沢君じゃん!おはよう!」 そう言って声を掛けてきたのは、同じイベント企画部の斎藤だった。 「あ、斎藤さん!おはようございます!」 斎藤は、ザ・仕事ができる女の代表格と言っても過言ではない人物で、あの森下からも一目置かれており、吉沢も何度かお世話になっている。 「何?吉沢君、家こっちなの??」 「はい、最近引っ越して…。」 「そうだったんだ!私もこの辺に住んでるからいつもこの時間に出てるのよ。」 そう言いながらニコリと微笑む斎藤。顔もそれなりに整っている斎藤が微笑むと、特に意識していなくても顔が熱くなるのを感じた吉沢であった。 「あ、そうだ。仕事には慣れた??」 コツコツとヒールの音を立てながら斎藤は他愛も無い話をし始めた。 「はい、大分慣れたとは思います。…まぁ、まだ森下さんには怒られるばっかりですけど。」 「はははっ、まぁ大丈夫よ。あの人は完璧に仕事をこなしたい人なの。…だから他人に厳しい分、自分にはもっと厳しい。……そんな森下さんが私は好きだし、カッコいいと思うわ。」 そう言う斎藤は遠い目をしながら、きっとその先には森下がいるような目をしていた。 「…好きなんですか?森下さんのこと。」 「…仕事仲間としてね。」
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