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慌ただしくその資料を受け取った吉沢はすぐに自分のデスクに向き直り、資料を読み始めた。
森下はそんな吉沢の姿に少し違和感を感じつつも、自分のデスクに戻りまた作業を始めた。
その頃、吉沢は少し赤くなった自分の顔を隠すように下を向いて資料を読むフリを咄嗟にしていた。
自分でこの感情の意味が理解出来ずに、焦る吉沢。どうして自分は2人が絡んでいる様子を見るとモヤモヤするのか……今までこんな事は無かったはずなのに。
---しかし、明らかに2人が話している様子を見るのが嫌だったのだ。2人が、自分にはわからない話をしていること、最初に森下が頼る相手は斎藤だという現実を突きつけられて…それを知らないうちに見ないフリしようとした自分が居たことを、吉沢は気付いてしまった。
……けれど、その気持ちにすらも見ないフリをして資料を読み込むことに熱中した。
昼休憩が始まる少し前に、何とか資料を読み終わり、誤字脱字を確認した吉沢は…心を落ち着かせるといつもの微笑みを顔に貼り付けて森下の元へと向かった。
「森下さん、資料読み終わりました。誤字脱字は3ページ目の此処と12ページ目の此処…のみありました。確認お願いします。」
「…随分時間かかったな。」
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