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そう憎まれ口を叩かれ、吉沢は少しイラッとしつつも笑顔を崩さずに応対する。
「すみません。次はもっと早く読み込めるように頑張ります。」
自分は何故、こんな上司に先程のような感情を抱いたのか…吉沢自身も不思議で仕方なかった。
「……まぁ…。」
そう言いながら、先程指摘した誤字脱字のページを確認する森下。
付箋に書かれた字は、丁寧で…的確に間違いを指摘したものであった。
「…ありがとう、助かった。戻っていいぞ。」
そう言って、少しだけ微笑んだ森下。……普段、褒め慣れていないのか、サッと顔を晒し資料に目を向けながら文字の打ち直しを始めた。
---それは、狡いだろ……。吉沢は何とかその声を押し殺し、「はい」と言って森下の前から下がった。
「…最近さ、森下の表情やら態度が優しくなったような気がするんだよね……。」
吉沢が戻ってくると、原田が小さな声でそんな事を呟いた。
「え?」
「いや…今も思ったんだけど、吉沢君には甘いなぁって思ってさ。」
「いやいや!そんな事ないですよ!!俺、怒られてばっかですよ!?」
「うーん…そうじゃなくてね……なんて言うんだろう、表情が柔らかくなったんだよなー、明らかに。」
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