第3章

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---あっという間に昼休憩の時間が来たかと思えば、すぐに吉沢はオフィスから出る。 それは森下も同じようで…2人が手にしているのは弁当。 「やっと森下さんの弁当食べられる!」 「おい、あんまり大きい声出すな。」 「すみません…つい。早く食べたくて仕方なかったので。」 「…っ、いいから早く食べろ!」 「えへへ、いただきます!」 目の前で美味しそうに自分の作った弁当を食べる吉沢に、つい目がいく森下。 ---これは最近よく見る光景だ。 弁当まで一緒に食べるようになった吉沢と森下。これも吉沢の提案だった。 『やっぱり一緒に食べませんか?俺、作ってくれた人の前で食べたいんです。で、その時に感想言いたいタイプなんで。』 最初は渋った森下だったが、吉沢が美味しそうに食べる姿を見るのは決して嫌いではないし、何より仔犬のような潤んだ瞳で見つめられては…森下は弱い。……とことん弱い。 『…分かったよ。でも、オフィスから出て屋上テラスでだ。…あそこはほとんど人が来ないから気楽に食える。』 会社には屋上テラスがあるが、あまり整備されていないため、あまり人が寄り付かない。机と椅子は用意されているが、緑があるだけの殺風景な場所なのだ。
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