第3章

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そそくさと退散した吉沢は、屋上テラスを出てからいきなりしゃがみ込み、頭を抱えた。 「…俺……何であんな事…?」 自分の口からごく自然に出てしまった言葉に戸惑いを隠せない様子だ。 「……早く仕事戻ろ。」 そう呟いた吉沢はノロノロと立ち上がり、オフィスに戻った。 ---一方、森下はというとご機嫌な様子で自分の作った弁当を食べていた。 午後の仕事を難なくクリアし、定時で帰る支度をし始めた森下に対して、吉沢は何とか仕事を終わらせていた。 さすがに同じタイミングで職場を出るのはマズイということで帰り支度を先に済ませた森下が最初に帰ることとなった。 その後、10分ぐらいして社員達に挨拶をした吉沢も会社を出て急いでスーパーへ向かった。 「森下さん!」 スーパーに向かうと、一通りの野菜を買い終えて肉を手に取る森下の姿を捉えた吉沢。 「おー、吉沢。遅かったな。」 「いやっ…、これでも急いだんですよ?」 そう言いながら少し息を切らす吉沢。よく見ると走ってきたのか髪もボサボサである。 「…冗談だって、ほらちょっといい肉買ってやるから。」 と言いながら肉を買い物カゴに入れる森下。そのままスタスタと次のコーナーへ向かう森下に吉沢は満面の笑みを見せた。
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