第3章

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落ちかけているタオルケットをそっ…と引っ張り、吉沢に掛け直した森下は、手際良く朝食の支度を始めた。 一緒に住み始めてから最初の頃は、あまり音を立てないように料理をしていた森下だったが、吉沢がちょっとやそっとの音では起きない事を知ってからは今まで通りに料理をするようになった。 次々と出来上がるご飯。弁当箱に作ったおかずを詰めながら、朝食用の皿に盛り付けをしていく。 「ん……美味そうな匂い…」 少し遠くから、吉沢の声がした。 「今日は起こさなくても起きたな。」 「腹減ったんで…おはようございます。森下さん。」 「…はよ。」 くぁぁと猫のような欠伸をしながらまだ開き切っていない目を擦って吉沢がキッチンに向かってくる。 ……森下はこの朝の時間が、何だか妙に落ち着かない。 無駄に色気を振り撒いている吉沢が、今日の朝食は何かと覗きに来るのはいつもの事だが、森下が普段知っている吉沢ではなくて落ち着かないのだ。 「めちゃくちゃ美味しそうですね、早く食べましょう!」 ご飯を目の前にすると、眠気も無くなりいつもの吉沢に戻るので、安心して朝食にありつける。 「そうだ、今日はイベントの最終確認で会場に行くけど来るか?」 「…!勿論行きます!」
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