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その後の食事自体は、楽しく充実した時間であった。
それぞれの近況で盛り上がり、何時の間にかすっかり日も暮れた。
姉は一昨年結婚をし、立派な家庭を持った。
今では、子供を設けた身でもある。
―――迎えにきた夫の車で、遠くの街へ帰宅していった。
今では、人の親となった彼女。
きっと、親子三人で暖かい食卓を囲むのだろう。
それでも、黙殺されて続けてきた母の気持ちが理解出来ないのだろうか?
正直、私には姉がとても非道な人間に感じられた。
気が付けば、終電も過ぎた時間。
私は、弟に自宅で軽く酒でも飲み交わす事を提案した。
狭いアパートではあるが、私と弟は兄弟であり同性だ。
いささか肉身相手に気にしすぎかとも思うが、何の問題も無い。
―――買出しを済ませ、周りの住人に迷惑にならぬ用にそっとアパートの鍵を開けて扉を開く。
扉を開ければ、私にはもう見慣れた薄暗い部屋。
いい歳をして独身の中年サラリーマンの部屋など、だいたいこんなものだろう。
明かりを点けようと壁を手探りしつつ室内を進んでいると、未だ弟が玄関で立ち尽くしているのに気が付いた。
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