■薄幸な母

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■薄幸な母

コンビニの袋を片手に、いつまでも私の部屋に入ろうとしない。 遠慮する事は無いと諭すが、それでも頑なに部屋に入るのを拒むのだ。 そういえば家族の中でも、弟は特に母を避けていた存在だったと思う。 ―――確かに幼かった弟にとって、他と違う母の姿は臆するモノだったのかもしれない。 しかし、今は彼だって立派に成人した大人である。 私は、少しでも母を理解して欲しいと願った。 姉弟水入らずの食事のレストラン。 ああ、こいつもまだまだ幼稚だなと感じた。 きっと兄に甘えたいのだろうと、少し羽振りをよくした。 せっかく、高価な肉を使った大好物のステーキを注文してやったのに。 ―――どんどん青ざめ、半分以下も残してトイレに駆け込んでいった弟。 嘔吐している暇なんてない。 男は、食べて食べてバリバリと働かねばならぬ。 しっかりと栄養を蓄え、いつかは出世払いでもしてほしいものだ。
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