「お年玉の使い道」

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 お年寄りにはこの階段が辛いらしい。小学生の僕にでもそうなんだから杖をつくようなお爺さんお婆さんにはさぞ堪えるんだろう。 「はーぁっ……」  上がった息を整えつつ、しっかりと締めたジャンパーの内ポケットからポチ袋の束を取り出す。  一つには入りきらなかったから三つに分けて合計数万円ちょっと。  これを手放すのはかなり勇気がいるけれど仕方がない。  緊張を隠しきれず、足を踏み出すのに少し時間がかかった。  ドキドキと自分の心臓の音を聞きながら握った鈴紐はひんやり冷えて身が引き締まった。 「……あれ。どっちだっけ」  鳴らしてからお賽銭……? それともお賽銭入れてから鳴らすんだっけか。  そもそも手を叩くのは一回? 二回? お辞儀してから……?  昨日、家族と来たとはお父さんのをそのまま真似したからあまり覚えてなかった。 「ええっと……」  お賽銭という名のお年玉片手に首をひねっていると大きなため息が頭上から落ちて来る。 「鳴らしてから賽銭じゃ。参り方の作法ぐらいさっさと覚えんか」  ひょいっと身軽に姿を見せたのは狐耳の神様だった。
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