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お稲荷様って近所に人は呼んでいて、この神社に祀られている由緒ただしき土地神さまらしいのだけど。他の人には見えない。
ごく稀に僕みたいなのが現れるから揶揄うのが日課だったと彼女は言っていて、見た目は僕とそう変わらない。巫女服に身を包んだ女の子だった。
「あけましておめでとうございます」
ぺこりと頭を下げると小馬鹿にしたように鼻で笑われた。
「それは昨日聞いた。まさか本当に持って来るとは思わなんだがな」
ちらりと視線が捉えたのは僕のお年玉だ。
僕の願い。お年玉の使い道。
それは随分前から決まっていて。
夏祭りの夜に僕はこうしようと決めたんだ。
「お稲荷様! これあげるから今日1日僕に飼われてください!」
「おなごを買うようになるとは、いっちょまえにオスだったか……我はなんとも悲しいぞ……」
途方に暮れるお稲荷様の言っていることは良くわからないのだけど、使い道といえばこれしか思い付かなかった。
……嘘だけど。他にも色々と欲しいものはあったんだけど、どうしてもお稲荷様を飼いたかった。
「だめ……?」
まだポチ袋はお賽銭箱に入れていない。
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