第1章

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ガムテープを穴の底に置き苦労して下半身を寝袋に入れ、穴の底に腰を下ろす。 腰を下ろしたあと左腕をガムテープで身体に固定。 左腕を固定するとガムテープを穴の外に投げ出し、寝袋の中に全身を入れ顔だけが覗くようにして内側からジッパーを閉めて、身体を穴の底に横たえる。 男は暗くなった空から落ちてくる雪を暫く見上げ、それから目を閉じた。 翌朝、昨日の夕方から降り続いている雪で住宅街は白く染まり、頭を割られたゾンビやゾンビに襲われ全身を喰われた人の死骸を覆い隠している。 玄関先に穴が掘られた家の門にはボードがぶら下げられていて、其処にはこう書かれていた。 [ゾンビに咬まれました。 でも自殺する勇気がありません。 墓穴は掘りました、その中にいる私を永遠の眠りに就かせてください。 お礼として、保存食料の残りの缶詰やレトルト食品、それに裏の菜園で採れた野菜で作った漬け物がありますので、これらを差し上げます。 家の鍵は私が着ている背広の胸ポケットに入っています。 宜しくお願い致します。] 玄関先の穴の中では、雪と泥で汚れた寝袋に入ったゾンビが起き上がろうともがいていた。
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