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ダイニングテーブルに、義明と百合は、向かい合わせで座っていた。
テーブルの真ん中には、カゴに入れられた林檎が4個。先日百合が、「1人1個ずつね」と、買って来た林檎だ。
百合は俯いたままで、言葉を発しない。その真向かいに座る義明も、黙ったままで、じっと百合を見つめている。その顔はどこか寂しげだ。
先に沈黙を破ったのは義明だ。
「本当なのか…?」口調は穏やかだ。
百合の目から、一粒の涙がこぼれ落ちた。
「ごめんなさい…事実です…」
「……そうか……で、百合はどうしたいんだ?」
「ごめんなさい…別れてください…」百合は、俯いていた頭をさらに低く下げた。
「子ども達はどうするつもりだ?」
「………」
「…ん?どうしたいんだ…?」義明の口調は、ずっと穏やかなままだ。
頭をテーブルに付きそうなほど下げたままで、百合は言った。
「子ども達は……」
「子ども達は?」
「ごめんなさい……連れて行けません…」百合はまた一粒涙をこぼした。
「子ども達はいらない…って事か……」
「ごめんなさい……」百合の目からは、次から次へと涙が流れ落ち、テーブルには涙で水たまりができていた。
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