過去から来た手紙

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過去から来た手紙

山のような仕事を終わらせ、終電間近の電車に飛び乗り、へとへとになって家に帰ってきた僕を出迎えたのは、一通の真っ白な封筒だった。 玄関のポストに挟まっていたそれは、どこか見覚えのある形状をしていた。 抜き取ってみると、あて名のところに僕の名前が書いてある。 そして、そこにあったミミズのような文字は、明らかに僕の筆跡だった。 「ああ、そうか」 湯気のような白い息を吐き出しながら、僕はぽつりとつぶやいた。 三年前の成人式、僕はこれでもかと盛り上がった友人たちにつられ、未来の自分に宛てた手紙を書いたのだった。 突然首筋を撫でた北風に僕は身を震わせ、ポケットに入っていた部屋の鍵を鍵穴に差し、がちゃりと回した。 玄関の扉を開けると、家の中は真っ暗で、外と同じく冷え切っていた。 後ろ手にドアを閉め、内側についている鍵をひねってロックする。 身体に染み付いたその動作を無意識のうちに行いながら、僕は今手に持っている手紙を出すことになったあの日のことを、ぼんやりと思い出していた。
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