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「でもさ、普通タイムカプセルって手紙とかじゃない?」
再び雑誌を袋の中に戻していると、会場の中心から大きな声が上げられた。
「あー、確かに。未来の自分に宛てた手紙ってやつだよね?」
「そうそう、それ。そういうのはやらなかったんだっけ」
「やってなかったわね。やりたかった?」
かつての生徒の言葉を受け、先生は腰に手を当ててよく通る声でそう言った。
会場にいたクラスメイトはみんなうーん、と唸りながら首をひねり、回答に窮していた。
「あ、じゃあ今やればいいんじゃない?」
すぐ目の前に座っていた子が、弾けたように明るい声を上げる。
「えー、やだ、恥ずかしいよ」
「いいじゃん、せっかくだし」
「そもそも便箋とか封筒とかあるの? なかったら書けないじゃん」
「私持ってるよー」
テーブルの隅で手が上がる。
同級生全員の視線が、色鮮やかなネイルが施されたその手に集まった。
「持ってるの!?」
「ファンレター用のお手紙セット切れそうだったから、ストック買っといたんだ。封筒60枚あるし、便箋は倍以上あるから、全員書いても余るよー」
おおー、と意味不明な拍手が上がる。
おそらくは、みんな心の中で僕と同じことを考えただろう。
どんだけファンレター書く気だよ。
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