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あの気持ちをもう一度
読み終わってからしばらくしても、僕は手紙を見つめて立ち尽くしたまま、動くことができなかった。
ふっ、と力が抜け、手紙の後ろに隠すようにして逆さまに持っていた封筒から、ぽろりと一枚、紙が落ちてきた。
床にふわりと舞い降りたそれに手を伸ばし、一瞬躊躇して、そしておそるおそる拾い上げる。
丁寧に切り取られた、マンガ雑誌のページ。
僕が初めて描いたあの作品が小さく掲載されている、僕にとっての宝物。
いつのまにか終わってしまっていた、僕の夢。
この手紙を書いた後、僕は再びペンを握った。
絵が思うように描けなくなってしまっていたから、好きなマンガを模写して、絵の練習をして。
マンガだけじゃなくアニメや映画を見て、ストーリー構成の勉強をして。
そうこうしているうちに、就職活動がやってきた。
僕は、就活を周囲の友達と同様に行った。
そして、僕はまたマンガと向き合うことを次第にやめていった。
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