あの気持ちをもう一度

1/5
前へ
/13ページ
次へ

あの気持ちをもう一度

読み終わってからしばらくしても、僕は手紙を見つめて立ち尽くしたまま、動くことができなかった。 ふっ、と力が抜け、手紙の後ろに隠すようにして逆さまに持っていた封筒から、ぽろりと一枚、紙が落ちてきた。 床にふわりと舞い降りたそれに手を伸ばし、一瞬躊躇して、そしておそるおそる拾い上げる。 丁寧に切り取られた、マンガ雑誌のページ。 僕が初めて描いたあの作品が小さく掲載されている、僕にとっての宝物。 いつのまにか終わってしまっていた、僕の夢。 この手紙を書いた後、僕は再びペンを握った。 絵が思うように描けなくなってしまっていたから、好きなマンガを模写して、絵の練習をして。 マンガだけじゃなくアニメや映画を見て、ストーリー構成の勉強をして。 そうこうしているうちに、就職活動がやってきた。 僕は、就活を周囲の友達と同様に行った。 そして、僕はまたマンガと向き合うことを次第にやめていった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加