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モアはいったん顔を上げ、その男のからだを上から下までさっと目を通して、だいたいを計測した。
「お体のご様子が芳しくないようですね。」
「ああ。賢者の石はほとんど効果は得られない。もちろん手放せないが。」
ジャンの手の中にある赤い石は血統書付きの本物の賢者の石だ。
モアもポケットの中に正体不明な賢者の石の欠片を持っているが、ジャンの石の値段とはぴんとキリほどに違う。
長老の赤い石の値段は億はくだらない。この賢者の石は事典の目録に万能薬と書かれてある。また邪気を払う効果もあるともある。
「ところで、あの赤毛の生徒は本物の触媒か?」
ジャンはさきほどの園庭の様子を見ていたようだった。
「まだ手に入ったばかりで、取り扱い説明書を製作中です。」
「・・そうか、・・ぅっ。」
そこでジャンは顔を歪め、胸を抑えた。
「モ、モア、じ時間がない。あ、あの水が手に入ったら、私に連絡を!」
従者は「すぐにお車の方に。」と、車いすを押して部屋を出て行った。
修道士は黙って彼らが部屋を出るまで頭を下げていたが、その顔には焦りがあった。
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