1人が本棚に入れています
本棚に追加
午後の練習は外ではなく教室で行うことになった。
『触媒と賢者の石』というビデオを触媒たちに見せながら教壇のモアは考え込んでいた。
45分のビデオでの講義は彼らには難易度が高いらしく、果南もあくびをし始めた。赤毛がいびきをかき始めたところで、モアは椅子から立ち上がった。
「内容が少々難しかったな。プリントを配るのでそれぞれ復習をすること。では、今日の課題は終わりだ。明日の午前までは自由時間だが、くれぐれも結界からは出ないように。」
彼はそう言い教室から出て行った。
その日の夕方は、触媒たち全員で食堂の調理場を使用して自分たちで夕ご飯の支度をした。冷蔵庫にある食材から零と果南が中心になってカレーライスを作った。
純一と幸一はテーブルの上を拭いたり食器を並べたりした。
その間、午前中からの険悪ムードを引きずって、静まりかえっていた。というより、このメンバーで実質話をするのはほぼ果南だけだった。
空気になった幸一は誰とも視線すら合せない。
果南と零は赤毛の方をちらちら見ている。
そうして、先に赤毛がもくもくと食事を済ませてしまい、自分の食器を洗って片付けると先に食堂から出て行った。
食堂のドアが閉まったとたん、純一が口を開いた。
「あいつはここから出ていけると思っていたらやばいな。いまここを出て行ったら直ぐに時空の割れ目に入って、二度とこの世に戻れなくなる。」
最初のコメントを投稿しよう!