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「いや、だからなんでそうなるんだよ」
「意外とね、金に対する姿勢は人生に対する姿勢に繋がるらしいよ」
藤守は続ける。
「まずは、金に対して、意味に囚われない行動をしてみるってのも、アリじゃない?」
「意味がわかんねえ…」
「そりゃ意味に囚われてないからね。別に俺は、阿久比にカメラマンになって欲しいなんて思ってはいないけど」
「え?」
「でもそうやって、意味にまみれすぎて、自分の本当の気持ちすら見えなくなった今のお前は、さすがにこっちも辛くなる。会社立ち上げたばかりの頃の俺みたいで」
「それは…」
「だから、俺も嫌われる覚悟で」
すると、藤守はテーブル越しに俺の右腕を引っ張り、俺の手首を掴んだ。そして、俺の掌を上に向けると、藤守の右掌が叩きつけられた。
掌と掌の間には、封筒が挟まっている。
「これは、プレゼント。それ以上も、それ以下もない。俺から、阿久比への、心を込めたプレゼント」
掌を押さえる力が強くなる。熱と圧を感じる。俺の力もそれに応じて強くなる。
「思い込みとか、常識とか、そんな『意味』なんか無視して、素直に受け取ってくれ」
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