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視線をあげて顔を見ると、飄々とした笑顔の藤守があった。ある種の怖さを感じながら、俺は口を開く。
「やっぱり、受け取れねえよ」
「なんで?」
「お前のそういう期待に、応えられるかどうか」
「期待してないって。俺は俺のやりたいようにやってるだけ」
「でも、それでも」
「お前なあ」
顔を緩ませた藤守が、俺の掌を封筒越しに叩く。
「俺の行動にまで、勝手に意味をつけるなよ」
「ごめ、そんなつもりは…」
「いいんだよ、それが普通だし。俺はさ、お前に自由に生きて欲しいだけだから。それだけ」
藤守の掌の力が緩み、離れる。だけど、俺は残された封筒を置くことも離すこともしなかった。ただ、その封筒を眺めるように見つめる。
「…ありがとう」
「どういたしまして」
俺が言うと、藤守がうなずきなから答える。そして、満足したような笑顔でウーロン茶を飲みはじめた。
俺はしばらく封筒を見つめていた。が、藤守がグラスを置いたタイミングでその手首をつかんだ。
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