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「ほい、プレゼント」
不意に言われ、差し出された藤守の手元に目をやる。
「え?なに」
食べ終えた皿を片寄せ、広げられたメニューを閉じて立て、拓けたテーブルに藤守の手が置かれる。
その下にあるのは、少し厚みをもった質素な茶封筒で。
藤守は手を元の定位置に戻す。茶封筒が開放され、俺の視線にさらされる。特に何も書かれてはいないようだ。
「それ、やるよ。俺からのプレゼント」
「プレゼント?なんだよ急に」
「いいからいいから」
藤守にうながされ、俺はその茶封筒を手に取る。重いとも軽いとも言い難い感触。
何の気なしに、糊付けされずただ折られただけの封を開け、中身を覗きこむ。
「…なに、これ」
「だから、プレゼント」
「どういうことだよ」
「どうもこうも、プレゼントだよ。それ以上もそれ以下もない」
釈然としない俺に対して、藤守は飄々としたような、力の抜けた表情をしている。
俺は、再び封筒の中を覗きこんだ。
間違いない。「天は人の上に人を…」でお馴染みの、あの学者の顔が見える。そしてあえて外に出さないまま、その枚数を数える。11枚。
「だからどういうことだよ」
封筒から視線を移すと、相変わらず飄々とした藤守の表情。
「どうもしないって」
「んなわけねーだろ。なんで、何の前触れもなく、ダチに万札ポンと渡すんだよ。意味わかんねーよ」
「だから、プレゼント。ほら阿久比、もうすぐ誕生日だろ?」
「誕生日って、おま、まだ二ヶ月先ですけど!?」
「あれ、そうだっけ?でもいいじゃん、もうすぐ誕生日ってことで」
「おま、何それ?何その取ってつけた感じ!何なの!?なんか企んでるの!?」
俺は混乱のあまり、イラつきながら笑ってしまった。
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