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ドン、と氷だけになったジョッキをテーブルに置く。俺は声を漏らしながら深く息を吐く。それまで藤守はずっと黙って、俺を見守っていた。
「…何とか言えよ」
俺は藤守を見据えるが、藤守は動じない。俺のイラつきがまた増しそうになった。
「おい」
「じゃあ逆に聞くけど」
表情を変えずに藤守が仕返す。
「何で、プレゼントが現金だと駄目なの?」
その問いに、俺はほんの一瞬だけ戸惑った。
「な、それは…失礼だからだろ」
「なんで失礼なの?」
「だっ…それは、金を渡すってこと自体が、いけないっていうか…」
「別に、賞金100万とかそういうのもあるんだから、いけないことはないんじゃない?」
「そ、それは、そういうことじゃないだろ」
「じゃあ、どういうこと?」
「どういうことって…そういうのは、心がこもってないっていうか」
「俺は心を込めたよ。阿久比の事を考えて。ピン札にして、封筒に入れたし」
「いや、そういう意味じゃなくて」
「じゃあどういう意味?」
「お前な!!」
らちが明かず、俺は思わずテーブルを叩いた。でも、口元だけ微笑んでいる藤守の表情を見て、俺は気まずくなる。
都合が悪くなると不機嫌になったりキレそうになったりしてしまう。俺の悪い癖だ。
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