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母は、2年前に亡くなった。元々病弱だったけど、その割に頑張って生きたほうだと思う。
「別に、吹っ切れてるし、もう」
「おばさんに対してはそうだろうけど。でも、あれ以来全くカメラに触れてないんじゃない?」
「当たり前だろ。母さんが死んだのに、いつまでも夢追い人なんてやってられないだろ。父さんももうすぐ定年だし、金も必要だから働いていかないといけないし」
「それなら、高い給料の貰える会社で、正社員で雇ってもらえればいいじゃない。非正規社員とバイトの掛け持ちよりは効率的だと思うけど」
「そんなの、この御時世どうなるかわからんだろ。そんなことは会社経営してるお前の方が、わかってるんじゃないのか?」
「だからこそわかるんだよ。長年続いている会社の凄さがね」
「でも、今更正社員なんて」
「正社員になったからってその会社に一生魂をささげる訳じゃない。定時で上がれる会社だってある。今は転職システムもしっかりしてるし、俺の知り合いにも転職エージェントがいるから紹介もできるよ」
「いや、でも…」
何でこういう不安定な労働状況になっているのか。俺自身は分かっていた。でも、
「本当は、諦めきれないんじゃない?カメラマン」
それを認めたくない自分もいた。それを、藤守に突きつけられた。
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