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リア・リセス。魔界の王。
キラキラ輝く銀色の髪に、宝石のような赤い瞳。分厚い黒のコートの下はきっと、意外とたくましい筋肉と白い肌が隠れているに違いない。
背中には身体を包めるくらいの大きな羽が、まるで眠りについているように折りたたまれている。きっとあれが広がれば凄く綺麗なはずだ。
そう思ってしまうほど、僕はリア・リセスという魔人に見惚れていた。
絶対的な自信と、品格のある趣、そして確実な強さ。
僕には無い物を、この人は全て持っている。
だからこそ、こんなにも美しく見えるものなのか。
「とても綺麗だ」
「……なんだと?」
「あっ」
気が付けば僕は、つい思ったことを口に出してしまっていた。
人と言うのは不思議だ。こんなにも絶望的なはずなのに、目の前に心を惑わすほどの美しいものがあれば、一瞬でも我を忘れてしまう。
レッド君も、そしてリア・リセスさえも、驚きと不信に交じった目で僕を見つめていた。
早く言い訳を考えなければ。
「そこの人間。今この俺に向かって何と言った?」
「え!あ、いや……その」
どうしよう。ずっと会いたかった人と会話してるという感動の方が強くて言い訳が全く浮かばない。
というかもう、焦りやら感激やらで心臓バクバクしすぎて、色んな意味で死んでしまいそう。
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