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その言葉に呼び寄せられるように、リア・リセスの隣から大量の黒い粒子が集まりだす。
それは徐々に何かの形を作り出し始めるように固まっていき、足元からその形を具現化させていく。
黒い靴に、黒いパンツ、そしてコンビニでよく見るあの青いチェックの入ったロー〇ンの服装。
それを着た男性は、なんだか面倒くさそうにクセッ毛のついた黒髪をポリポリと掻いている。
どう考えてもこの空気には似つかわしくない、猫背のコンビニ店員。
しかしその眼はリア・リセスと同じ赤色。そして唇からは小さな牙が生えている。
一つリア・リセスと違う所と言えば、黒い羽がない代わりに。お尻から蛇のような尻尾が生えている事だ。
「急に何ですかぁリセス様。今俺バイト中なんですけど」
「馬鹿者。俺が呼び出したんだ、察しろ」
「へいへい」
どんなにらしくなくても分かる。
この男も、強敵だ。
「行け、ガルディア」
その瞬間。
ガルディアと呼ばれた男は、気が付くとレッド君の目の前に立っていた。
レッド君は咄嗟に距離をとろうとするが、間に合うわけもなく。まるで巨大な鉄球にでもぶつかったかのように勢いよく後ろへふっ飛ばされてしまった。
人間の身体が、あれほど軽々と飛ばされる光景を初めて見た。
僕を庇ってくれたレッド君の姿は、今は遠すぎて全く見えない。
気が付けば、あのガルディアとかいう魔人もいなくなっていた。多分レッド君に止めを刺しに行ったのだろう。
早く助けに行かなければーー。
「ほぉ。自分の事より、他人の心配か?」
クスクスとほくそ笑むリア・リセスに、意識が傾く。
そうだ、僕だって今絶体絶命状態なんだ。
「あ……ぁあ」
最初に目にした時のドキドキが嘘のように、ただ恐怖だけが襲い掛かる。
コツン。コツン。
ゆっくりゆっくりと、確実に僕の方へ近づいてくる死。
僕は逃げることも、戦う事も出来ないまま、その場で石のように固まってることしか出来なかった。
そしてーー。
気が付けばリア・リセスと僕の距離は、目と鼻の先まで近づいていた。
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