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頭を下げて謝る僕を、リア・リセスは不思議そうに首を傾げている。
もしかして、僕の勘違いだった?
「あの、綺麗だって言ったのが気に食わなかったんじゃないんですか?」
「誰もそんな事言ってはおらん。寧ろ面白いと思ったくらいだ」
「え?」
「人間で、しかも同じ男にそんな事言われたのは初めてだったからな。大抵の奴等ならば普通俺を見たら怖がるぞ?」
そりゃそうだ。実際僕も油断できない緊張感くらいはあったし。ちょっと怖かった。
「なのに貴様は、恐怖よりというよりも……そうだな。恍惚に近い表情をしていた」
「そ、そこまで分かりやすかったですか!?僕!」
「まぁ別に感情が表に出やすいのは貴様に限った話ではない。人間というものは分かりやすいものだ。どうやっても感情を隠して生き続けるなんてのは、無理な話なのだからな」
それって言わば、考えていた事が全部丸見えだったってことですよね?
「あぁ~~……恥ずかしいぃ……」
膨れ上がった羞恥心が弾けて、腰が抜ける。
だってこんなのズルい。
僕は相手の気持ちも、今思っていることも何にも分からないのに。自分の事は全部相手に知られている。
例えると、片思いの相手に自分の好意が意図せず知られてしまった時のようだ。
「クククッ」
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