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誰とでも親しみやすく接する優しさ、笑顔、会話、交流関係。これも全て身に着け、今の俺は誰もが知る、頼りになる炎の戦士レッド様として活躍している。
「ありがとう」「かっこいい」「大好き」「僕の憧れ」そんなお世辞にも聞こえる皆の声は、日常茶飯事。
男性には憧れの眼差しを向けられ、女性からは好意を持たれ、子供からは尊敬され、ご老人からは感謝をされる。
それがとても嬉しかった。俺はヒーローという仕事を誇りに思った。
皆の笑顔が見れるなら、自分を頼ってくれるなら、自分が正しい人間だと実感出来るなら、どんなに辛くても、苦しくても頑張れる。
そう思っていたはずなのに。
いつの日か俺は、抱えきれない重みを感じていた。
毎日のように浴びせられる、期待の目。
耳を塞いでも聞こえてくる、歓声の声。
どんなに遠くにいても、伸ばされる救いを求める手。
時々、一人になりたかった。
時々、逃げ出したかった。
時々、許されたいと思った。
時々、本当の俺を見てほしいと願った。
けれどいつの間にか、俺の存在はもう後戻りなんて出来ないくらい。
平和のーー正義の象徴となっていた。
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