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「ガハッ!おえぇ!」
壁にぶつかった衝撃が、背中から全身に一気に伝わって。とてつもない激痛と吐き気が俺を襲い掛かった。
こんな痛み、今まで味わったことが無い。多分骨も何本かやられている。
「ぁ、はっ。はっぁ」
ただひたすら呼吸をするだけで精一杯。
変身もいつの間にか解かれて、俺はただのか弱い一般人になり果ててしまっていた。
ーーこのままでは確実に殺される。
ーー早くここから逃げないと。
そう頭では分かってはいても、激しい痛みと焦りが指先一本動かしてくれない。
「あちゃ~。やり過ぎたか?」
猫背のまま、ダルそうな足取りで崩れた瓦礫を踏み渡り。何も出来ず無様に仰向けに倒れる俺の前にやってきたコンビニ服の魔人。
そのまま「どっこいしょ」なんてオッサン臭い事を言いながら、俺の横にゆっくりと腰を下ろす。
「お~い。まだ生きてっか?」
反応も抵抗もしない俺の頬を、珍しい生き物を見つけて恐る恐る触る子供のように突っついてくるコンビニ魔人。
だがその表情はさっきから全く変わらず、無だ。
殺すならさっさと殺してしまえばいい。
それなのにこの魔人は、瀕死の俺をただ見て、触っている。
一体何を考えているんだ?
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