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色々と訳が分からないまま、静かになった空気をゆっくり吸い込んで大きく息を吐き出す。
とりあえず、助かったみたいだ。
きっとあの魔人が相手じゃなかったら、今頃死んでいたと思う。
でもどうしてあの魔人は、俺を見逃したのだろうか?どうして敵である俺の心配をしてくれたんだろうか?
分からない。
けれどあの魔人だけは、俺の悩みに気付いてくれた。
今まで誰も気づいてくれなかった俺の悩みに、敵であるはずのアイツが。
ずっと抱えていた重みを、こうもあっさりと取り除いてくれた。
「……あの魔人の名前は、何て言ったけ?」
頬に残る熱が、俺の心臓を徐々に加速させていく。
「そうだ、確か名前はーー」
この胸の高鳴り、上昇していく熱。そしてーー忘れられないあの魔人の顔。
「ガルディア」
その名を口にした時、俺はこの気持ちの正体を知ってしまった。
「あぁ……これが、好きって事なんだ」と。
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