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「ま、なかなか面白い物だったぞ?特にあの武器、あれは我々と魔人と同じ力を持っている。あのような物をどうやって作ったのか調べたい」
「調べたいって……」
それは、敵の情報を得たいと言う事になるんじゃないのか?
もしこの変身時計を調べられて、その対策を練られたとしたら?僕達はきっと、もう魔人達とは太刀打ちできなくなる。
もしかして、僕と恋人になった理由ってその為だったりすんじゃないのか?
「オイ貴様。あの姿にもう一度なれ」
腕を組んで、僕に変身しろと命令するリア・リセス。
反抗すれば、きっと僕の命はない。
けれど、僕達が魔人達と唯一太刀打ちできるこの武器を知られてしまえば、僕達人間は終わりだ。
ーーどうする。
「どうした。早くあの姿にならないか」
「い、いえ。実は、あの姿になるには結構な体力が削られて……正直今は出来る気がしません。一日に一回が限度なんです」
「なんだと?」
苦し紛れの嘘に、思わずリア・リセスから視線を外してしまった。
でも、体力が削れているのは本当の事だし。それに変身したら、戻った時の負担が結構かかる。だから正直、今はもう変身はしたくない。
まぁ、一日一回は嘘だけど。
「ほ、本当なんです。だからごめんなさい!!」
頼むから殺されるのだけは嫌だ。どうか見逃してくれ。
そんな気持ちで、ひたすらに頭を下げた。
すると、チクチクと痛かった視線が消えた。
「……別に、そこまで謝る必要はない」
「え?」
「無理なら別に良いと言っているのだ。ただの興味本位で言っただけだしな」
「そ、そうですか……」
あまりにもあっさりと折れてくれたリア・リセスに、思わず拍子抜けしてしまう。
いや、おかげで助かったんだけど。
でもどう見ても頑固な性格みたいだし、言ったところで簡単には引き下がらないと思っていた。
僕の言葉を信じてくれたのか、それとも本当にただの興味本位で言っただけだったのか。今ではどうでもいいと言うように、視線をテレビへ向けている。
この人は、何を考えているのか全く読めない。
身分の差なのか、歳の差なのか、それとも人種の違いのせいなのか。
近づいたい、分かりたいと思っているのに、この大きな差がどうしても壁になっている。
なんだか少しだけ、悲しいーー。
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