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「はぁ。なにやってるんだ俺は……」
「おまたせ~って、なに?どうした?大丈夫か?」
「あ、いや」
会計を済ませてきた白井が、心配そうに俺を見つめる。
チャラいくせに意外と友達想いのある奴なんだよな。女遊びと金遣いの荒さが無ければ、きっとモテるはずなのに。
「なんか今、凄く失礼な事考えてただろう」
「アハハ!そんなわけないだろう白井君!さぁ早く戻ろう!」
「そういう時だけキラキラオーラ出すんじゃねぇ!」
嫌がる白井の前で、満面な笑みを浮かべながら先にコンビニを出る。
その時。道路を挟んで向かい側にあるアパートの入り口辺りで、俺の笑顔を唖然とした表情で見つめていた男がいた。
見惚れていたとか、有名人を見た感激とか、そういうんじゃない。
出会ってしまった動揺、危機感にも似ている。青ざめた表情だ。
「ガルディア」
前に見たコンビニの制服とは違って、よれよれの黒のシャツに黒のジャージ。寝起きなのかボサボサになった寝癖だらけの髪に、相変わらずの猫背。そして片手には白いゴミ袋を持っている。
今はあの蛇の尻尾もなければ、牙もない。パッと見た目ただの人間にしか見えないその姿。
きっと誰もが、彼を魔人とは思いもしないだろう。
けど、アイツを知っている俺だけは見逃さなかった。
それは彼方も同じなようだ。
「あぁ……会いたかったんだ君に、ガルディア……ってオイ!」
声を掛けようとした瞬間。ガルディアはゴミ袋を捨てて、そそくさとアパートの階段を駆け上がっていく。
もしかして、ガルディアはあのアパートに住んでいるのか?
「ちょっと待ってくれ!」
「え、レッド!どこ行くんだよ!」
走り出そうとした時、白井は何事かと俺の腕を掴んで引き止める。
だが俺はその手を振りほどいて、走りながら「悪い!俺用事できたから先に行っててくれ!」とだけ伝え。そのままアパートへと向かった。
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