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「君と、話がしたかったんだ」
慎重に言葉を選んで、身体を起こす。
「あの時は有難う」
「は?」
なんとも間抜けな声が聞こえたが、俺は気にせず言葉を紡ぐ。
「今まで誰かを助けることしかしてこなかった俺が、あの時初めて君に救われた。だからずっとお礼を言いたかった」
「え、いや……なんのこと?」
「自分を大事にしろって言ってくれたことだ」
「なんだ、そんなことかよ」
「君にはどうでもいい事でも、俺にはとても励みになったんだ。だから……有難う」
皆に向ける笑顔とはまた違う。素直に嬉しい笑顔を向けて、俺はガルディアの手を取って両手で包んだ。
男にしては細めの骨ばった手。人間ではないからか、とても冷たい。
けれど。彼の顔が少し照れくさそうに視線を逸らして頬を染めていた姿を見ていると、魔人も人間もさほど変わらないんじゃないかと思った。
ただ互いの考えや目的が違うだけで、話し合えば分かち合えるんじゃないかと。いつのまにかそんな希望を抱いていたと同時にーー。
じゃあ俺が魔人に恋をしたって、許されるんじゃないのかと思えてきた。
本気で好きになったなら、男同士であれ、人外であれ、関係ないはずだと。
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