欲に溺れたレッドは、魔人を襲う

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「あ、あの。そろそろ手放してくれませんかねぇ?」 「……なぁガルディア」 「え、なに……。つうかさっきから、眼が怖いんですけど。獲物を狙うハンターみたいな眼してますけど」 俺に手を握られたまま、ガルディアは怯えたように後ずさる。 だが俺は構わず彼の身体を自分の方へ引き寄せて、今にもキスしてしまいそうな距離まで顔を近づけた。 「えっ……え?」 怯えで乱れる息が、俺の鼻先にかすむ。 不安の涙で潤んだ赤い眼が、獣のような俺の顔を映し込む。 こんな俺は、俺でも知らない。 全ての人達を平等に救ってきた俺が、ただこの男だけを欲しいという欲望に飲まれている。 まるで肉を見つけた肉食動物のように。 死体を見つけたカラスのように。 ただこの男をーー。 「食べたい」 ドロドロと脳が溶けていく感覚。 卑しい色欲と根強い執着心だけが、俺の指先を、唇を、本能のまま動かした。 「ぁっーー、いやっ、やめっ」 俺の下で、痛みと快楽に苦しみながら、必死に熱い呼吸を繰り返しているガルディアの姿。 きっとこれが、正義のヒーローになった俺の初めてのーー『悪い行い』だ。
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