弱虫ブルーと、魔界の王

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「<緊急連絡。緊急連絡。ヒーローは応答願います>」 「おっと、ヒーロー管理部会から連絡みたいだ」 お仕事モードに入ったレッド君は、剣を鞘に納めて立ち上がり。真剣な顔つきで連絡に受け答える。 「はい。こちらレッド」 「<レッド君。今どこにいる?>」 「春先駅前の近く……と言ったところですかね」 「あ、ぶ、ブルーも一緒にいます!返事遅れてすみません!」 「<ブルー君も一緒か。丁度いい>」 僕もすぐさま立ち上がり。ヒーロー管理部会との連絡手段として使われる小さな腕時計型通信機を口元へ近づけ敬意を示した。因みにブルーに変身する時もこれを使う。言わば変身ベルトのようなものだ。 「緊急だなんて珍しいですね」 「あぁ、すぐに気づいてもらえて助かったよ」 ヒーロー管理部会。 そこは僕達ヒーローを育成、管理する、言わばヒーロー会社のようなところだ。 僕達はこのヒーロー管理部会の指示で動き。事件や事故、そして魔人退治をしている。 因みに変身にも連絡にも使える便利な小型腕時計も、ヒーロー管理部会が用意したものだ。 一体どうやってこんなものを作ったのか、ヒーローに変身した時の僕達は、普段の倍以上の力を発揮でき。魔人にも対抗できる身体能力を得ることが出来る。 これが無ければきっと、ただの人間でしかない僕達は一瞬でやられているだろう。 ヒーロー管理部会は、この町の平和の為になくてはならない存在だ。 「それで、どうしたんですか?」 「それが……」 ヒーロー管理部会からの緊急連絡は珍しくはない。けれど今回は、どこか管理部会の人の様子がおかしい。 レッド君も僕も、いつのまにか真剣な表情で聞いていた。 「<春先駅でね、現れたんだ……>」 「なにがです?」 「<僕達の前に最初に現れてた最強の魔人……>」 「まさか!」 「<そのまさかだ>」 管理部会の人のこの異常な空気、そして震える声。 もしかすると、もしかしなくても、その現れた人物というのは。 「<魔界の王。リア・リセスが>」 その名前を聞いた途端。 僕の中で込み上げてきたのは、ずっと待ち望んでいた喜びの気持ちだった。 「行こうレッド君!」 「あぁ!」 レッド君と僕は急いで路地を出て、春先駅へと向かった。
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