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駅に着いた時、既に人は誰もいなかった。
この町の中心ともいえる大きな駅。
人の声も姿もないというのは、きっと今日しか見れない珍しい光景だろう。
不思議な感覚の中、静寂に包まれた空気に少しづつ不安が募っていく。
「気を抜くなよブルー」
「う、うん」
ホームへ向かう階段の前で僕とレッド君は、辺りを注意深く見渡しながら慎重にホームの中へ入ろうと足を進めようとした時。
ーーコツン。
「っ!!」
軽く響いた靴音が、一瞬で空気を張り詰めさせた。
「ほぉ……貴様らがあのヒーローとかいう連中か?」
コツン。コツン。と規則正しい足音が、ゆっくりと階段を下りてくる。
「成程。見た目は他の人間共と変わりないが、随分と面白い物を持っているようだな」
面白い物というのは、きっとこの腕時計の事だろう。
僕とレッド君はこれで変身して、これまでも色んな魔人達と戦ってきた。
けれど、その男を見て思い知らされる。
僕もそしてレッド君さえも、やはりただの人間でしかないんだと。
「それで?この俺を殺しに来たのか?人間」
「っ!」
背筋が凍り付いた。
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