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床に蹲る真崎をこのまま放置しておけば、そのうち壊れるだろうと思う。
今の真崎は性癖だけに囚われ過ぎて、例え無機物のように扱われたいという強烈な欲求を抱こうとも自身が生身の人間だという事を忘れている。
設楽が真崎を異常だと思った理由は、そこにある。例えマゾヒストだろうと、感情のない人間などいないし、これまで設楽は見た事もない。真崎とて、現にこうして感情はある。
ただ、真崎の場合は性癖の向かっている方向が悪すぎたとでも言うのだろうか。真崎の欲求は、あまりにも人とはかけ離れたものだった。それ故に、抱えている欲求が強ければ強いほど、人らしい感情をいだけば混乱する。そう、今の真崎のように。
『だから貴方を選びました。貴方なら…わたくしをそこの玩具と同じように扱ってくださるでしょう?』
あの晩、挑発とも懇願ともつかぬ態度でもたらされた真崎の言葉が脳裏を過る。確かに、真崎が自分を選らんだのは正解だろうと設楽も思う。設楽は、人を壊して遊びたいとは思わない。
ふぅ…と、小さく息を吐けば、真崎の肩が小さく震えるのが分かる。
「お前は自分を何だと思ってやがる?」
「っ…わたくしは……設楽様の玩具です…」
「そうじゃねぇ。お前は何だって聞いてんだよ」
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