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そんな中。『匡成さんに飼われたい』という女が少なからずいるという事実。
これまで変わった女もいるものだと聞き流していた設楽だが、真崎を相手にするようになれば一定数そういう人間もいるのかと腑に落ちたという訳だ。
「だからってお前は雪人さんにどうこう言おうなんぞ思わねぇだろ」
「それは勿論です」
「事実はさて置き、同じじゃねぇのか?」
「尊…」
「うちの親父は、そんな小せぇ事でぐだぐだ言いやしねぇよ。雪人さんも変わらねぇだろ」
確かに真崎にとっては知られたくない事なのかもしれないが、万が一雪人がそんなくだらない事で何かを言うような男だとしたら、それまでだと思えばいい。設楽や真崎は確かに仕えている側の人間ではあるが、主人を選ぶ権利はある。
やがて長く続く塀の横を走る道へと車が差し掛かる。そこが、須藤の本宅だった。雪人が住まうその家は、都心からほど近い場所にありながら広大な土地を持ち、どこかの城かと見紛う程の母屋は完璧な西洋美を誇る。
道路に面した大きな門扉を通り抜ければ、そこには綺麗に手入れされた庭が広がっていた。それを見る真崎の目が、僅かに緩む。
「たった数カ月なのに、懐かしいですね」
「俺はお前が居なくなってから、呼び出される度に度肝を抜かれてたがな」
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