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「雪人様、いったいどういう事か説明してください。確かにわたくしは迷ってはおりましたが、辞職などと言った覚えはございません…」
「いや…だからそれは…、お前が居ないと色々と不都合が…」
ぼそぼそと言い訳じみた科白を吐く雪人を見れば、設楽の予想は外れていないだろうと、そう思う。それにしても…と、設楽が匡成を見れば、匡成が腹を抱えて笑いながら雪人の頭を撫でていた。
「おい設楽。お前、筋読めてんだろ?」
「まあ、だいたいは…」
「おーおー、だったらそこの坊主に説明してやれ。それと、今日は仕舞だ仕舞。ころっと騙された分、明日っからきっちり働けよ」
そう言ってシッシッと片手を振る匡成に、設楽は小さく息を吐く。
「それと真崎、説教は俺がしといてやっから、あんま雪人苛めんじゃねぇぞ?」
「それは承知いたしましたが…」
ひとりだけ食い下がろうとする真崎に、匡成が笑い、短く設楽の名を呼んだ。それが、とっとと真崎を連れて出ていけという意味である事は、設楽が一番よく分かっている。
「行くぞ」
「ですが…」
「説明は後でしてやる。抱えられたくなきゃ自分で歩け」
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