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揶揄うような口調で耳元に囁けば、真崎は困ったような顔をしてドアへと向かった。それを見遣り、設楽は匡成に向かって深く腰を折る。頭を上げた時にはもう、設楽や真崎など眼中になく雪人に掛かりきりなのを見れば、匡成も随分可愛がっているものだと思う。
結局、ほんの僅かな時間顔を出し、何のお咎めもなく部屋を追い出された設楽と真崎である。
真崎の執務室に入り、設楽は断りを入れて煙草を点けた。小さいとはいえシャワールームまでをも完備した部屋を見回し、設楽は住んでいる世界からして違うのだと実感する。
―――その割に子供じみた真似をするなあの人は…。
嘘がバレて匡成の背中に隠れる辺りが微笑ましい。自分よりも年上の、しかも雪人のような男を捕まえて可愛いなどというのはおこがましいと思いはするが、匡成が可愛がる理由は充分わかる設楽である。
匡成との間に血の繋がりはないが、正直なところを言ってしまえば実の親よりも、養父よりも匡成と過ごす時間の方が長い設楽だ。事実組内でも、匡成の実子である一意とは兄弟の杯を交わしていた。
―――親子揃って振り回されてちゃ、どうしようもないな…。
そう思えば苦笑が漏れる。ついでに、せめて真崎には振り回されないようにと思う設楽ではあったが、既に充分振り回されている事実に呆れ返るしかなかった。『世話好きの器用貧乏』と、そういう匡成の言葉に反論も出来ない。
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