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わたわたと慌てふためく姿に笑いながら言ってやれば、真崎の頬が微かに朱に染まる。戸惑うように視線を泳がせ、堪えるように唇を噛み締め、思案するように眉根を寄せた。そうしてようやく顔を上げた真崎を、設楽は静かに見つめる。
「設楽様、わたくしは…貴方に感情まで押し付けてしまってもよいのでしょうか…? それでも…、貴方はわたくしの所有者でいてくださいますか…?」
「元より所有者になるなんて言った覚えはねぇな」
「ぁっ…ああっ、そんな事を仰らないでください…! どうかっ、どうかわたくしを…っ」
縋るように脚を掴む真崎を、設楽は無表情に見下ろしていた。どうすれば真面(まとも)な言葉をこの男から引き出す事が出来るだろうかと思案する。歪にゆがんだこの男の口から、真っ直ぐな言葉を吐かせてみたい。
「いいか真崎、普通に、はっきり言え。俺はただのモノになんざ興味はねぇんだよ。欲しいってんなら同じ場所まで上がってこい。後で幾らでも蹴落としてやる」
立ち上がり、裾を払い、凛とした佇まいで見上げる真崎を綺麗だと思う。この男になら、囚われてもいいとさえ。否、既に囚われている自覚はある。
最初から折れている物を折り曲げたところで何が面白いというのか。どうせなら、真っ直ぐなものを圧し折りたいと、そう思う設楽もまた歪んではいた。
「設楽様、お慕い申しております。どうか、わたくしのこの気持ちを受け入れてはくださいませんか?」
「それだけか?」
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