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はしゃぐ真衣を無言で見下ろして、設楽はさっさと歩き始めた。相手にするのも面倒臭い。血の繋がった妹に胸を押し付けられたところで欲情する筈もなく、させたいようにさせておけば機嫌が悪くなる事もないのだ。
腹が減っているという真衣を食事に連れて行き、クリスマスプレゼントが欲しいと強請られ女が好みそうな店を設楽は連れ回された。ようやく買い物を終えて店を出れば、チラチラと白いものが視界を通過していく。
「雪だ。ホントにホワイトクリスマスだね!」
「そうだな」
「今日寒かったもんね~」
そう言いながら腕に身を寄せる真衣が、無邪気に見上げてくる。傘が必要なほどではないが、そろそろ真衣を送った方が良いかと設楽は考えながら歩く。
「くっついてると温かいね」
「まあ…」
「ねぇねぇ、近くにパンケーキのお店が出来たんだけど、そこ行こ?」
「お前さっきケーキ食っただろう」
呆れたように言えば、誤魔化すように真衣が笑う。その瞬間、ゴトンッと異様に重そうな何かが落ちる音が聞こえ、何気なく視線を向けた設楽は思わずその場に足を止めた。
「お兄ちゃん…?」
「真崎?」
「え? 知り合い?」
「まあ…」
真崎潤(まさきじゅん)。痩身で、如何にも仕事ができる男といった雰囲気を纏う真崎は、実際大企業の会長を務めた男の私設秘書という肩書を持つ。
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