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苛立ちを隠そうともしない設楽の声に、とぼとぼと真崎はリビングへと姿を現した。項垂れるように床に正座をし、覇気も何もない真崎の姿は見ていて面白くもなんともない。
「いい加減にしろよお前。取り乱すって何だ。どうしてあんなモン置いてった」
「……申し訳ありません…」
真崎の態度は、設楽には判断が付きかねた。元より極端に偏った性癖を真崎は持っている。それは所謂マゾヒズムと呼ばれるもので、相手に罵られたいがために話そうとしない可能性もある。
無理に吐かせたとしても、その場の快楽に流されて口にした言葉など設楽自身が信用できない。本当に、面倒臭い相手だと、そう思う。
「謝るんじゃねえ。俺は話せって言ってんだ」
「わたくしは…わたくし自身も…、戸惑っているんです…。こんな、玩具にあるまじき気持ちなど…。設楽様が他の誰かのものだと思うだけでわたくしは…嫌で嫌で堪らなくて…。感情など…不要なはず…なのに…」
途切れ途切れながらも言葉にしながら、真崎自身も頭の中を整理しているかのようだった。そして言葉を重ねるごとに真崎は自分自身に幻滅し、落胆し、意気消沈していくのがはっきりと分かる。
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