定食屋の恋

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(5) パラソルのおっちゃんの話を要約するとこうだ。 おっちゃんは、若かりし頃から自分の飲食店を持つことを夢見ていた。 人が笑顔になる瞬間がいくつかあるとして、美味しいものを食べるときというのは一番身近なはず。だから、美味しいものを作ることが笑顔を作る一番の近道だ。 おっちゃんは、自分の作る料理でたくさんの人を笑顔にさせたかった。 料理学校を卒業後、おっちゃんは京都祇園にある、少々お高い料理店の下っ端として働いた。 最初のうちは、調理器具を手にすることも一切許されなかった。来る日も来る日も、皿洗い、厨房の掃除、ゴミ捨て……雑用ばかりだったが、おっちゃんは朝から晩まで健気に働いた。 しばらくして、そんな彼に運命の出会いが舞い降りた。
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