定食屋の恋

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「これ」 カタンっとテーブルの真ん中にそれを置いた。それは、紺色の小さな箱だった。 「俺の気持ちは昔とおんなじや。ちっとも変ってない」 おっちゃんは箱を開けた。 箱の中からは、あの日、よし子さんに渡せなかった指輪が顔を覗かせていた。 「捨てようかと考えたこともあった……でも、できひんかった……」 おっちゃんはよし子さんの手を握った。 「こんなに待たせて本当にすまなかったと思っている……でも……もし、きみの気持ちがあのときと変わっていないなら……受け取ってくれませんか?」 おっちゃんはそう言って頭を下げた。 よし子さんは戸惑った。 大好きな人からの告白。 こんなに嬉しいことはない。 箱の中の指輪は30年以上の眠りから覚めて、キラキラと輝いている。 でも……
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