定食屋の恋

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「注文は?」 俺は、念のため壁にかけられたメニューを眺めた。 コロッケ定食、アジフライ定食、野菜炒め定食に、天ぷら定食……在学中にほとんどすべてのものは口にした。 俺は腕組みをして少し考えた。 おっちゃんも腕組みをして俺の注文を待った。しばらく考えた後、俺は口を開いた。 「"水餃子"の気分もしたけど……やっぱり"いつもの"で頼むわ。」 「おっけー、おっけー。今日は"最後の晩餐"やから、おまけもつけたるわ」 おっちゃんは、にこりとする。 このしわくちゃの笑顔も、当分の間見られなくなるんだな…… そう考えると、少し淋しかった。 「"最後の晩餐"ね……」 俺は、そう言って少し濃いめの食前酒を流し込んだ。
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