定食屋の恋

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「まだ誰も来ないから少し話すか?」 そう言って、おっちゃんは俺の向かいに腰かけた。 「次こっちに戻ってくるのは?」 俺は顔を渋らせた。 「うーん……分からない。休日出勤はほとんどないはずだけど、まだ始まってみないと何とも言えないし、連休とか長い休みは帰省に使うかもしれないし……」 「そうか……」 おっちゃんは、このとき初めて悲しそうな表情を見せた。 なんてったって6年間、 ずっと世話になったもんな…… 俺はすかさず付け足した。 「大丈夫。今年中には行くよ、必ず」 おっちゃんは、それを聞いて少しだけ表情を明るくした。 「東京行っても頑張りや。おっちゃんは、カルビーがいい嫁さん連れてくるまで店やってるつもりやし」 なんだ、それ。 俺は思わず笑った。 「でも、おっちゃん。無理はしたらあかんで」 「お互いにな」 そのとき、店のドアが開いた。
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