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取り急ぎ作ったものを彼の前に並べた。炊きたてのご飯とわかめと豆腐の味噌汁。鶏胸肉の醤油麹焼きとパプリカ、茄子、玉ねぎ、舞茸を炒めてさっとぽん酢をかけたもの。
「すぐできるものばっかであんまり手は込んでないけど」
「全然そんな風には見えないよ。すごいな、眞名実。見かけによらない」
熱心な口調で褒めたつもりらしいが。最後の一言が完全に余計。
神野くん、わたしのことどういうイメージで見てるんだ?ちょっと憮然としてお茶を一口飲む。急須で淹れた焙じ茶。彼は自分の失言に特に気づく風もなく、でもちょっと気がかりそうにダイニングテーブルの向かいに座るわたしの方を見た。
「いいの?俺だけ。眞名実の分は?」
「中途半端な時間だから。割とお腹空いてないんだ。わたしのことは気にしないでいてくれたらいいんだけど」
「じゃあ、遠慮なく」
箸を取って手を合わせ、いただきます、と口の中で小さく呟いて料理に手をつけた。お味噌汁を一口飲んで、ぱっと目を輝かせる。
「すごい、美味しいんだけど。…何だろう?うちのと全然違うよ」
「それは。…神野くんちのお母さんにちょっと。失礼な物言いじゃないかな」
彼のお宅のご飯がどういうものかわからないのですごくコメントしづらいんですけど。
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