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自宅からほど近いほんの小さな公園。小走りに近づくと、もう既に小柄な線の細い男の子が所在なげに一人立ち尽くしてるのが見えた。しまった、待たせちゃったかな。
わたしたちはみんな区立中学の同級生だから学区内に自宅がある。試しに神野くんにその公園の名前を出したら、すごい近所ってわけじゃないけど何となくわかる、道筋はグーグルマップで見るからと請け合った。それでそこで待ち合わせることにしたんだけど。
逆に言うと、上林くんのみならず高松くんの家だって恐らくこの近辺なわけで。どこでどんな風にわたしたちが会ってることが伝わるかわからない。疚しいことなんか誓ってないってのに、こそこそしなきゃならないのは何となく腑に落ちないけど。知られたら面倒な羽目に陥るのは目に見えてる。ここは割り切って慎重に振る舞った方がいい。
そんなわけで、神野くんをあまり目につく場所に晒して置いちゃいけない。わたしは慌てて駆け寄った。
彼はすぐにわたしに気づき、例によってあまり感情を窺わせない無表情で淡々と言った。
「そんな走らなくていいのに、何も」
「うん、まぁ。…待たせちゃったのかな、と」
ごもごもと呟く。やっぱり人目につきたくないから、とあんまりはっきり言うのは気が引けた。
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