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「大丈夫だよ。僕もまだ来たばっかだったから。そんなに待たされてはいない。…このすぐ近くなんだ?思ったよりうちから近かった」
「まぁ、うちの学区もけっこ狭いからね」
湾岸近くほどではないけど、この近辺もだいぶ高層マンションが増えている。てか、うちもそこそこ階数がある。わたしの部屋は真ん中より下だから、大して眺めもいいわけじゃないけど。
だから中学もだいぶ人数が多かったけど、その割に学区の面積は広くないんじゃないかな。急激に人口が増えたエリアだから。隣の学区の学校も結構近いし。
すぐにうちのマンションの前に着く。あまり気にせずぴっぴっと暗証番号を入力するわたしの背後で彼は上空を仰いで見上げた。
「すごい、高いな。眞名実んちは上の方なの?」
「いや全然下だよ。八階だもん。結構周りもこのくらいの高さの建物が多いから、別に遠くも見えないし」
「でも真新しくて綺麗だし。いいとこ住んでるんだな。…ここは他の連中は知ってるの?」
わたしは頭を振って、開いたゲートの中へと彼を導いた。
「この入り口まで送ってもらったことはあるけど。中に入れたことはない。何階に住んでるかも知らないと思う」
あの人たちだけじゃない、誰も。高校の友達も大学の人たちも、無論会社の人も。好きな男の子さえここまで立ち入ったことはない。
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