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やっぱり非常識なことなのか。でもその時はそんな話を友達に改めてするのが気が重くて憂鬱だった。こんなに長いこと機会がないとは想像しなかったし。
わたしの素っ気ない応答に戸惑ったように神野くんは口を噤んだ。もっとなにか言いようがあったのかな、とちょっと気になり始めた時、彼はふと冷蔵庫の中身に目を留め、背後から上体を伸ばして覗き込んできた。
「ほんとだ、すごいね。…何人家族?ってくらい、…あ」
思い当たった、と言った様子でわたしに目を向ける。
「そう言えば、お母さん再婚したんだっけ。じゃあ、もしかしたら新しいご家族もここに?そしたら僕、留守中に上がり込んで。…非常識だったかな」
ちょっと真剣に焦った様子だ。まあ、年頃の男の子が付き合ってもいない女の子の部屋に上がるって、神経遣うというか気がひけるとこあるのかもしれない。家族と同居してるかどうかって結構切実な問題だよね。
でもさっき説明した気もするけどな、と思いつつ安心させようと手振りで落ち着かせる。
「だいじょぶ、言ったでしょ。ずいぶん前から一人暮らしなんだ。母親は再婚して以来ここには住んでないって。まあそのだいぶ前からほとんど帰ってこなかったしね。…神野くん、苦手なものとか嫌いなものある?和食と洋食どっちがいい?」
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