第18章 結婚するよ

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「…眞名実」 神野くんが寄り添うようにわたしのそばに屈んだ。並んで一緒に冷凍庫の中を覗き込みながら何か言葉を探してる。 「僕。…何て言っていいか、わからないけど。だけどこれからは。…君のこと」 「同情、しないで」 自分でも首を竦めそうになるくらいぴしゃりとした声が出てしまった。 「今までこの話、誰にもしたことないの。だって別に大したことじゃないでしょ?わたしは…、捨てられたわけでも虐待されたわけでもない。ちゃんと…、学校は最後まで出してくれたし。家もあったし食べ物もあった。お金だって不自由がないようにいつも沢山振り込まれてたし…。母は、あの。忙しかったんだよ。仕事だって大変だったし」 何でわたしは弁解してるんだろう。口が勝手に動いて言葉を選び出す。次に何が出てくるのか自分でもよくわからない。わたしは鳥の腿肉の塊を取り出して冷凍庫の扉を閉めた。 これを解凍して、醤油麹でも塗して。さっと焼いて炒めた野菜でも添えよう。火が入った方が野菜も沢山食べられるし。神野くん、ほんとに嫌いなものないのかな。ピーマンとかも大丈夫?     
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